探究学習のススメ−日曜は、科学実験の探究に没頭する。−

2019.07.17 Wednesday 15:22
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    科学実験塾を営んでいると、ある壁に突き当たります。ある壁というのは、「限られた時間の中で、科学実験を通して学びの本質を生徒に伝えきれているのか」という問題です。

     

     

    ■探究学習で得られる3つの力

     

    学びの本質とは、探究する学習の中にあります。科学実験は奥深く、興味や閃きをそそる素材の宝庫ですから、探究するのに適しています。自然科学の原理を知り、科学と日常生活との接点から新たな疑問や課題を起こし、課題の解決に向けて試行錯誤する。探究活動の過程において、「課題を自らに問う力」・「考える力」・「解決する力」を養えます。もっとも、科学実験以外の分野でも夢中になれるもの・探究できるものがあれば、3つの力を養うことは可能です。理科教育に従事する者として、ここでは科学実験を中心に話を進めます。

     

    探究学習の一方で、偏差値や受験の合否を教育のゴールだと考えている人は未だ世の大半を占めています。こうした傾向は、功利主義が渦巻く世相の表れかもしれません。例として、『地域の御三家・四天王と呼ばれる高校ならどこでもいいから入りたい。』とか、『学部は関係なく、MARCH以上の大学ならどこでもいい。』とかいった声がよく聞かれます。(かく言う私も10代の頃は右に同じでした。)しかし、学びの本質を欠いたまま勉強に臨んでも思うように成績は上がらないでしょう。詰め込みとテクニックで合格を勝ち取ったとしても、受験の成果が個人の豊かさと社会の持続繁栄に寄与しない見せかけのものに終わるかもしれません。(個人の豊かさとは何かという問題がありますが、それは別の機会に。)学ぶ上で大切なことは、学びの奥深さ・考える楽しさを知っているかどうかにあります。それでも、多くの受験生や親は点数に直結する(と思い込んでいる)勉強やハウツーばかりを追いかけ、探究学習には目もくれません。

     

     

    ■探究学習は受験と無関係なのか―堀川の奇跡が証明したこと―

     

    京都市の中心部、かつて本能寺があった場所に私立高校と見紛えるほどの近代的な校舎がそびえています。京都市立堀川高校は、明治41年創立の京都市立堀川高等女学校を前身とする伝統校です。公立ながら毎年、京都大学の合格者数ランキングで上位に顔をのぞかせることで有名ですが、20年ほど前までは国公立大学の合格者数が10名に満たない学校でした。いったい、この20年の間に堀川高校ではどんな秘策が施されたのでしょうか。私立高校にありがちな特進コースを設けて、予備校のごとく受験の猛特訓を生徒に課したわけではありません。

     

    堀川高校の特徴は、20年前に新設した探究科という一風変わった名称の専門学科にあります。探究科は、人文・社会系の人間探究科2クラスと自然科学系の自然探究科2クラスで構成されています。自立した個人を養成するという理念の下、探究科の生徒たちは主体的な学びを実践しています。具体的な活動の一つとして、1・2年次に履修する探究基礎とよばれる科目があります。探究基礎では、独自テキストを用いたゼミナール形式の授業や個人研究活動を通して、ディスカッション・質疑応答・パネル発表などの経験を積みます。その目的は、受験に直結した学力の向上ではなく、「どのように研究学習に取り組めばよいのか」という“探究学習の仕方”を学ぶことにあります。

     

    探究科初年度の卒業生を輩出した2002年には、前年6名だった国公立大学の合格者数が106名へと大躍進を遂げ、堀川の奇跡と謳われました。探究学習の仕方を学んだ生徒たちは、自ら課題を設定し、その課題の解決に至るまでのプロセスを試行錯誤する学びを行ってきました。試行錯誤する学びには用意された正解がありません。生徒たちは、教科書をなぞる学習にはない楽しさや苦しさを経験する中で、学びで広がる可能性を実感してきたのではないでしょうか。堀川の奇跡は、探究学習を通じて生徒たちが進路への明確なビジョンを見据え、学びのモチベーションを抱いた証左です。

     

     

    ■科学実験を通して探究学習させることへのジレンマ

     

    科学実験は、黒板とテキストがあれば授業が成り立つ座学とは異なり、試薬や科学器具を扱いながら進行する実習授業です。故に、科学実験と向き合うには腰を据えて取り組む必要があります。さらに座学と同様または、それ以上に思考する労力も要します。というのも、科学実験とは本来、疑問を問うところから始まり、予備知識を調べ上げ、仮説を巡らし、実験計画⇒準備⇒検証⇒失敗や新たな疑問⇒検証の繰り返し⇒考察、に至るまでの地道で長い道のりをたどるからです。試行錯誤しながら科学実験を探究するには時間を要します。たまに来る実験教室の2〜3時間程度の授業時間において、生徒たちにこの道のりをじっくり探究させることにジレンマを感じる時があります。

     

    科学実験のプログラムを検討する時、時間内で完結できるように内容を絞り、可能な限りの下準備を事前に施し、分かりやすく再現性のある結果となるように調整します。生徒たちは、こちらが事前に敷いたレールをたどりながら実習に臨むわけです。本来、科学実験は、仮説の誤りや実験方法・条件設定の甘さによる失敗がつきものです。一発で成功するようにお膳立てされた実験ばかりを体験していると、エンターテイメント性を追求し、理解が深まらないというパラドックスが発生します。言い方が悪いのですが、授業時間が限られている以上、面白く分かりやすい科学現象のいい所どりをさせてしまっている節は否定できません。もちろん、理科の専門塾として充実した内容を行っている自負はありますし、生徒たちに科学への好奇心を喚起させ、基本的理解を深めさせる上で、一定の責務を果たしてきたと思っています。しかし、中学生以上を対象にする実験塾として、面白楽しの実験結果を受け身的に楽しませて終わりでは、意味がありません。

     

    昔の教え子から当時よく聞かれた言葉があります。この教え子は、教室へ入って来ると「今日は、どんな楽しい実験をしてくれるのか?」と私に聞くことが挨拶代わりでした。毎回、塾に通うのを楽しみにしてくれていた点では、私にとって嬉しいエピソードです。しかし、どこか実験ショーを体験しに来たかのような受け身な言葉に実験塾としての至らなさみたいなものを感じていました。もちろん、この教え子が悪いのではありません。むしろ、好奇心も旺盛で、理解も優秀な生徒でした。子どもたちが受け身の学習姿勢となってしまう原因は、学校をはじめとする日本の教育の在り方にあります。

     

     

    ■受け身型学習に慣れすぎてしまった子どもたち

     

    日本の凡その学校では先生の教えたことをなぞることが教育のかたちとされてきました。子どもたちは小学校から受け身の学習スタイルを強いられてきたため、自学自習の方法を知りません。日本の教育は、教科ごとの枠にはめられた既知の知識の習得に重きを置いています。学校でも塾でも、生徒全員が一人の先生へ体を向けて、教えられたことを素直になぞり、正しい解き方に沿って解くという受け身の学習が行われています。受け身型学習のすべてを否定しているのではありません。年齢の段階に応じて子どもたちの真っ白なキャンバスに既知の知識を学ばせることは必要です。積み上げた知識を体系化すれば、考える際の引き出しとなるからです。しかしながら、受け身学習の経験しかない子どもたちは2つの弊害に陥りがちです。一つは、問題は与えられるものだという思い込みであり、もう一つは、解答に至るプロセスよりも正解をすぐに求めてしまう学習姿勢です。

     

    受け身型学習に慣れた子どもたちに「仮説を立よう」だとか、「結果から考察しよう」だとか、「新たな疑問を生み出そう」だとか求めても、子どもたちは何をどのように考えればよいのか分かりません。そこで、考えるために必要な基礎知識を学ばせた上で、実験のプロセスと考え方を教える必要があります。実験の失敗も授業に活用すると、失敗が試行錯誤を促し、思考と理解を深めさせる材料となります。先生は、安全を確保しながら見守り、生徒が行き詰った時にアドバイスを与える役割に徹して、探究が生まれる環境を作れば良いのです。

     

     

    ■あなたの日曜日の7時間をください。

     

    探究する学びとはどういうものなのか。探究から得られる前述の“3つの力”をどうしたら養えるのか。これらは、先生からテキストを使って教えられるのではなく、自ら探究活動する中で掴み取るしかありません。科学体験ショーではない、知的探究としての科学実験を行うにはまとまった時間が必要だと述べてきました。一つのテーマを掘り下げるために、失敗も含めて様々な角度から実験を試行錯誤する。「どうすれば課題を解決できるのか。」、「仮説を検証するために実験計画をどのように立てれば良いのか。」、「結果から得られたデータをどのように整理して捉えればよいのか。」、手を動かし、眼を利かせて、思案する。科学実験の探究に没頭することで、「問う力」・「考える力」・「解決する力」を身につける。実験塾を運営する者として、科学好きな中高生に科学探究づくしの場を提供したいとの思いを巡らせてきました。

     

    中高生は受験勉強や部活動に忙しい日々を送っています。特に部活動では休日の活動と朝練が当たり前のように行われ、中高生の貴重な時間を奪っています。国体やオリンピック、その先のプロ入りを目指しているのならば部活動に青春をかけてください。ただし、理路整然とした指導の下、科学的なトレーニング法を取り入れて成長期の体づくりを考慮した環境が整っていることを願います。しかし、もし所属している部活動から半ば強制的に参加を求められているのならば、または、周囲と歩調を合わせ仕方なく参加しているのならば、もしくは、精神論を唱える鬼顧問と先輩の顔色を伺わなければならない空気が蔓延しているのならば、あなたが本当に興味のある分野に時間を割くべきです。

     

    理科塾は、科学系の学習と進路に興味を抱く中高生を応援します。月に1度の日曜日の7時間、科学実験の探究に没頭してみませんか。できることなら毎週日曜日としたいところですが、他教科の勉強も必要ですし、家族や友達や恋人?と過ごす時間も大切ですから、控えめにしておきます。それでも、朝から夕方まで少人数で主体的に科学探究をするのは、ハードスタディです。これまで気づけなかった学びの世界に足を踏み入れることで、知りえなかった未来を垣間見るチャンスがここにあります。

      

    解答をすぐに求める学習しか知らない生徒よりも、解答に至る道筋を考え抜く力に長けた生徒の方が、受験でもその後の人生でも道を切り拓いていけます。

     

     

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    科学実験に渦巻く幻想と誤解―理科実験を学ぶ意義―

    2019.11.05 Tuesday 15:55
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      「理科実験を専門とする塾をやっています」と話すと、おおよそ以下のような反応をいただきます。「面白そうですね。楽しそうですね。」「子ども(小学低学年or未就学児)にやらせてみたい。」「科学実験のお楽しみイベントをやったらいいね。」etc.…。もちろん、みなさん好意的に受け止めて声をかけてくださっているので、これらのお声をありがたく頂戴しています。ただ、心の中である想いがこみ上げてきます。それは、理科実験から連想される世間のイメージと理科実験のあるべき本質とが乖離している風潮に対する憂いです。

       

       

      ■科学実験は日常や学習と切り離された体験型娯楽?

       

      科学実験はバラエティー番組で恰好のネタになります。キャラ立ちする専門家による科学ショーは、ちょっとした不思議を面白おかしく解き明かしてくれます。タレントさんがプロのリアクションでショーを引き立て、お茶の間に「へぇ〜」の旋風を巻き起こします。こうしたバラエティー番組自体は分かりやすく楽しい内容です。

       

      バラエティ番組の科学ショーが生み出した科学実験のイメージは、子どもたちをドキドキわくわくさせる素材に合致します。昨今は子どもを対象とした科学イベントがあちらこちらで開催されるようになりました。こうした科学イベントは、子どもたちの科学への興味を引き出す入り口として一定の役割を果たしており、ともすれば、小難しくて嫌煙されがちな科学を日かげから日なたの存在へ引っ張り出すことに成功しました。

       

      幼い子どもたちが科学実験に胸躍らせる姿は、大人をほっこりさせるし絵にもなるでしょう。けれども、経験値が低く論理的思考力と学力の土台が未発達な子どもたちは、科学実験の現象を感覚的に楽しめても体系的な理解を得るに至りません。そこで、科学実験は驚きと楽しさを伝道する手品のような娯楽と化します。科学実験に興じた子どもたちが中高生になり、「実験は好きだけれど理科や数学は嫌い」・「理科や数学が世の中の何の役に立つのか分からない」と捉えてしまう現実は残念でもったいない限りです。こうした子どもたちにとって科学実験は非日常世界のものであり、教科書や受験勉強とは無縁のものと認識されてしまっています。これは子どもたちに限ったことではなく、保護者をはじめ世間にも当てはまります。科学実験が日常や学習と切り離されたエンターテイメントに終始するほどに、理科実験の本質が置き去りにされている気がしてなりません。

       

       

      ■科学は日常世界と隣り合わせの存在

       

      日常には科学が溢れています。気候・生活・仕事において意識するしない関わらず、私たちは科学現象に囲まれ、科学技術の恩恵を授かりながら生活しています。

       

      例えば、料理で言えば、調味料を入れる順序で有名な「さしすせそ」は浸透圧や分子の大きさで説明ができます。気象で言えば、ガラスの曇りをとる術や朝霧が立ち込める理由の説明には、気温差における飽和水蒸気量の知識があれば対処できます。他にも、濡れた髪の毛を速く乾かすにはドライヤーの熱に頼るのではなく風を上手にあてるのが有効だとか、相撲では相手の押してくる力の反作用を利用すると小柄な人でも勝てるとか、加熱用カキと生食用カキの区別が鮮度の違いによるものではなく養殖場の場所の違いによるものであり、それはプランクトンと海に流入する養分における食物連鎖が関係しているとか、酸化チタンなどの光触媒技術を利用した外壁材は建物の耐久性を向上させ外壁の退色も防いでいるなど、例を挙げるときりがありません。

       

      科学は日常とは別世界にある特別で小難しいものではなく、日常の世界の森羅万象を解明し、社会を革新させるものです。

       

       

      ■理科実験で培われるのは忍耐力と日常に応用できる思考力

       

      理科実験が他の教科と異なる点は、机上の思考ではなく五感を生かした実践的な思考を要することです。というのも、理科実験を行う上で失敗する場面や思い通りにならない場面で求められる試行錯誤という行動は思考の舞台を作り上げるからです。

       

      例えば、理科のテスト問題で【 】のような条件文言を見たことがあると思います。

       

      同じ直径の鉄球と木球を高さ50僂涼賄世ら同じ斜面に転がした時、ゴールに速く到着するのはどちらの球か?

      【ただし、摩擦や空気抵抗は考えないものとする。】

       

      教科書やテスト問題上の正解(つまり、机上の正解)は、《鉄球も木球も同時に到着する》です。球の質量は落下速度に関係しないからです。しかし、実際に実験を行ってみると僅かに鉄球が先に到着します。これは、斜面と球の摩擦および球が受ける空気抵抗によって誤差が生ずるためです。では、誤差を最小化して理論通りに近づけるにはどうしたらよいのか。斜面の素材を変更するか?球の径を小さくするか?真空装置の中で実験を行うか?原因を探り、こうするといいのではと仮説を立て、改良を施して再検証する。こうした試行錯誤を行う中で思考を練り理解を深められるのです。

       

      科学の原理原則は論理的であるからこそ、問題の原因を探ったり解決方法を導いたりする上で論理的思考力が養われます。日常に応用できる論理的思考力は“理科"という教科を通して習得されるべき力であり、“理科”という教科が存在する理由です。実験検証は、仮説に基づき条件を変えながら繰り返し実験を行う地道な活動です。僅かな結果の差異に着眼する。仮説や理論との整合性が取れなければ原因を探り解決策を練る。観察力・洞察力・創造力・忍耐力を駆使して主体的に理科実験と対峙する。理科実験の本質は、科学実験ショーや成功のお膳立てをされた科学実験体験のようなレールに乗せられている立場では学べません。

       

       

      ■理科実験で培われる思考サイクルはすべての教科に通じる

       

      理科実験のような体験型学習は受験と無縁だと捉えられがちです。受験や定期テストというハードルを前にして、多くの受験生と保護者に選ばれるのは理科実験塾よりも受験対策や定期テスト対策を対象にした学習塾です。受験で必要とされる学力は、その場限りの知識と解き方の詰め込みではなく、筋道立てて解答を導く考え方です。しかし、学習塾に通う多くの生徒が陥りがちな症状は受験対策への最適化であり、彼らが論理的思考力を醸成することはありません。(もちろん、学習塾においても学びの本質を理解し思考力を向上させられる生徒もいます。)論理的な考え方は一朝一夕で身につきませんから、普段から何らかの活動を通して思考する癖を身につけるほかありません。理科実験や理系進学に関心を持てる人ならば、理科実験は思考する癖を習慣づける最適な素材の一つです。

       

      情報を分析して、解決法を構築した上で、効率的に説明(実証)する。これは理科実験で行われる思考サイクルですが、英語・数学・国語などの教科でも同様の思考サイクルが必要とされます。

       

      例えば、英語の長文解釈問題を解く時は、文節単位で係り受けを考え整理する《情報を分析》⇒日本語訳を組み立てる《解決に向けた構築》⇒問題の条件と字数制限に合わせて分かりやすく要約する《効率的な説明》という思考サイクルが要求されます。

       

      数学で言えば、二次関数の問題を解く時は、問題文とグラフを読み込み情報を整理する《情報を分析》⇒知りうる法則と知識を総動員して解法を組み立てる《解決に向けた構築》⇒場合分けなど順序立てて解答する《効率的な説明》という思考サイクルが要求されます。

       

      受験は知識とハウツーの詰め込みで乗り越えられると思われがちですが、出題者が問いたいのは考え方と表現方法です。もちろん、知識の習得は必要ですが、知識は考え表現する際の道具と部品です。受験問題では知識を知っているか否かを問われているのではありません。知っている知識をどの場面でどのように活用するのかが問われています。暗記ばかりの勉強をしても一定の点数より向上しないのは、思考のサイクルが身についていないからです。

       

       

      ■好きを伸ばして将来を切り拓く面白さ

       

      人は好きな道に出会い没頭すると、必要な技術や学問を習得して、さらにその道を究めようとします。子どもたちが自主的に勉強に取り組み成長するには、周囲から与えられた勉強ではなく、自ら見つけた"好き”が近道となります。そうは言っても、ボサーっと過ごす我が子に「勉強しなさい。○○しなさい。」と口うるさくなってしまう親御さんの気持ちは分かります。我が子を案ずる親御さんに聞いていただきたい「好きを自己成長力に変えた高校生の実話」があります。

       

      自動車レースF1の世界に単身飛び込み、現在ハースF1チームのチーフレースエンジニアとして活躍する小松礼雄(あやお)さんの遍歴をお話しします。チーフレースエンジニアとはチームの戦略やマシンセッティングを統括するトップエンジニアで、チーフ職は各チームに一人しかいません。(現在のF1は全10チームなので、F1のチーフエンジニアは世界に10人しかいません。ちなみにF1ドライバーは各チームに2人ずつ在籍しているので計20人となります。)欧米人が幅を利かせるF1レースの世界では、ホンダのような日本のメーカー絡みを除けば、日本人が単独でエンジニアリングやチーム運営の世界に身を置くことは稀です。

       

      小松さんは自身を“文系出身のエンジニア”と称しています。というのも、高校時代は数学の偏差値は30台で英語も全く話せなかったからです。高校卒業を控えて「F1のエンジニアになるためイギリスに行く」と決心したのですが、先生には相手にされず、友人には馬鹿にされたそうです。しかし、単身渡英し、大学予科学校や英語学校に通い英語力を身につけながら、自動車工学で有名なラフバラ大学に入学します。英語も数学も苦手だった小松さんが、大学卒業時には自動車工学専攻において主席に次ぐ2位の成績を修めます。大学院では実践的な機械工学を習得し、卒業後念願だったF1の世界に職を得ます。F1エンジニアの世界とは、優秀な学校を卒業しエリート意識が高い理系人間が集う場所です。そうした世界において、“文系出身エンジニア”を自負する小松さんは、コミュニケーション力を生かし、データ分析が主流になったF1の世界において現場感覚を重視した柔軟な仕事ぶりで実績を築き上げていきます。やがて"エンジニア小松”の名は知られるところとなり、現在の地位に上り詰めます。

       

      小松さんは高校大学時代を振り返り、「高校では物理や数学が何の役に立つのか分からなくて、ぜんぜん面白くなかった。イギリスに留学してからは物理や数学の意味と目的が分かり、学ぶことが楽しくて仕方なかった。」と語っています。

       

      理科実験に話を戻します。理科実験の活動に没頭し科学への興味を増すと、科学と社会のつながりを意識し、目標を抱けるかもしれません。進路を見据えた時、必要な教科に意味を見出すでしょう。小難しい化学式もそれが何の役に立つのか、何を意味するのかを理解できるでしょう。理科との関連が強い微分積分や三角関数や統計学を学ぶ必要性も実感できるでしょう。大学での研究では文献や論文を読みこなしたり、研究発表したり、海外の機関と共同研究したりしますから、国語力と英語力を身につける必然にも行き当たるはずです。社会の課題を知ることで研究の方向性を見出せます。

       

      好きな道から学びの楽しさと意味を知る。受験の為や学校の成績の為と用意された教科をこなすのは面白くなくて当然です。思春期の子供たちが、一点の好きから学びを広げる面白さに気づける環境こそ、大人が思春期の子供たちに用意するべきではないでしょうか。科学に好奇心を抱ける中高生が、理科実験をお楽しみイベントとしてではなく探究力を養える学びとして捉えられるように理科教育を広めていかなければなりません。

       

       

      中学から理系を目指す理科実験&国語専門塾|理科塾

      https://rika-jyuku.com

       

       

       

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