数字や形に見えないから価値がある

2019.12.13 Friday 13:47
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    TBSドラマ「G線上のあなたと私」は、同局で話題となった「カルテット」の再来と一部のネット民の間で囁かれているそうです。大人のバイオリン教室で知り合った、年齢も立場もまちまちな3人の生徒を中心に繰り広げられる心の動きや人間模様が繊細で共感を呼びます。私は仕事柄、塾や教室を舞台としたドラマを好みがちで、毎週火曜日が待ち遠しくなる"G線”は今年のマイヒットです。

     

    終盤に差し掛かった第8回では、バイオリン教室の眞於先生が、手の持病の再発によりプロへの道を挫折し、バイオリン教室も退職してしまいます。失意の底にいた眞於先生は退職の日にボイスレコーダー付のチューナーを手渡されます。そこに録音されていたのは、3人の生徒がプライベートコンサートを開催した際に、主人公小暮也映子が話したスピーチと、3人が演奏した"G線上のアリア”でした。

     

    『大人のバイオリン教室は、いろんな人がゆるっとふわっとバイオリンだけでつながっている場所なので、上手くなったところで何の役にも立たないし、別にどうしても続けなきゃいけないとか、そんなこともない。仕事や学業が忙しくなったり、家族に何かあれば、まず一番最初に生活から消える。そういうものです。

    …(中略)…

    でも、少なくとも私は、眞於先生のバイオリンが大好きで、先生のおかげでここまでこれた。きっと、私はこの先たとえバイオリンを続けてなかったとしても、何度も何度も先生が出会わせてくれた音楽に救われると思います。眞於先生は、私にそういうものをくれました。』(原文のまま)

     

    録音された也映子のスピーチを教室の片隅で聞き入る眞於先生、『まさか、こんなことになるとは思わなかった。私、救われてしまいました、あの3人のバイオリンに。』と言い残し、教室を去ります。

     

     

    私が生徒に伝えたい学びは、理科実験の試行錯誤や考察を通して育む探究する姿勢や思考する力です。このような姿勢と能力は、テストの点数UPや合格のような目に見える成果と異なり、一朝一夕で身につけられる訳ではありません。常々、生徒や保護者には、「興味・思考力・行動力を育むには、継続が必要であり、時間がかかります。教室の外でも科学への眼をもって行動するなど、長い視点で成長を捉えてください。」と話しています。とはいうものの、教えている私自身も、目に見えにくい成長をどうしたら生徒に実感させられるのか、理科実験から学ぶ意義と学ぶ面白さを生徒に与えられているのか、と自問自答する毎日です。

     

    それでも私がこの仕事を好きでいられたのは、生徒や保護者の方から掛けてもらった何気ない言葉のおかげです。「理系分野に目標を見つけて行きたい高校を決めた。」・「日常の中で科学の存在に意識が向くようになった。」・「家族ぐるみで科学の話が食卓の話題に上がっています。」等々。また、在籍していた生徒たちの成長した今を知った時、僅かでもその成長の通過点に関われたかもしれないと、勝手に救われています。(もっとも、教え子たちは、裕福な家庭環境に育ち優秀揃いであり、本人たちの努力によって成長できている訳で、私は彼らの一助にすらなれたかどうか分かりません。)

     

    塾の経営者として目に見える成果は、売り上げや利益です。私も家族を養い生活していかなければなりません。また、経営者である以上、教室を軌道に乗せることが現実世界で迫られた責務です。しかし、私が、子どもたちに成長の核となるような"好き”や"気づき”を与えられていると実感できる瞬間が私の生きる糧でもあります。

     

     

    人は、目に見えて分かりやすい数値や形を目標とすることで安心してしまいがちです。学生ならば、テストの点数や受験合格を追いかける、部活で勝利至上主義に傾倒する。社会人であれば、売り上げや利益を追いかける。上司からの評価や出世を追い求める。いずれも現実世界で迫られた必要ですが、それらは例えると車とガソリンのようなものです。性能の良い車と満タンのガソリンを用意できても、どこに向かって何のために車を運転するのか、ドライバーが目的と意志を持たなければ幸せなドライブはできません。勉強の中に面白さを発見する。目標を見据えた勉強がある。勝利に向かうプロセスの中に競技への愛情や向上心を抱く。お客の信頼と満足を得る。ビジネスを通して社会への創造や変革を築く。どんな自分になりたいのか、何を好きで大切にしたいのか。本当に価値のあるものは数字や形で見えにくいところにあるものです。

     

     

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    1年後・2年後に受験を迎える子と親へ

    2020.02.07 Friday 15:50
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      2020年も12分の1の月日が過ぎました。センター試験と中学入試は終了し、2月に突入した現在は、私立大学・国公立2次・高校入試が佳境をむかえています。中学入試に限って言えば、首都圏の国立私立中学受験者数は4万人台後半を推移し、公立中高一貫校の受験者数と合わせると6万人を超え、首都圏に在住する小学6年生(約29万人)の5人に1人が中学入試に臨んだ計算となります。そして、受験シーズンが終わると同時に1年後2年後の受験に向けて新たな戦いが始まります。

       

       

      ■そもそも受験する意味を考えたことがありますか?

       

      受験に対する子と親の熱の入れ様は相当なものです。中には、少しでも偏差値や知名度が高い学校に我が子を進学させようと躍起になっている親もいれば、目の前に敷かれたレールを信じて進まなければならないと自分を追い込んでいる子もいるでしょう。受験の道を選ぶ、志望校を決定するという判断に対する理由とプロセスは人それぞれに異なりますが、1〜2年後の受験に臨もうとする子と親へ、胸に手をあてて考えてほしいことがあります。

       

      「あなたはなぜ受験をする(させる)のですか?」

       

      偏差値の高い学校を出れば約束された将来がある(はずだ)から。

      大学進学実績の高い学校だから。

      就職に有利な大学だから。

      我が子に苦労する道を歩ませたくないから。

      社会の勝ち組になるため。(負け組にならないため。)

      自分(親)と同じエリート街道を歩ませたいから。(もしくは、同じ低学歴の道を歩ませたくないから。)

      周囲に対して優越感を抱きたいから。

      周りが受験する雰囲気だから。

      自分だけ周りから出遅れないために。

       

      上記に挙げた理由にあてはまる方は、今一度受験する意味を考えてみてください。

       

       

      ■勉強は世の中に必要とされる、考えられる大人になるためにあるもの

       

      受験勉強を通して学びとるものは、パズルを解くような解法の暗記と受験攻略テクニックではありません。受験勉強は、問題から問われている本質を読み取る力、想像力・判断力を駆使して思考する力を養います。中でも大切な成果は、"知りたい・学びたい”という知の欲求を抱ける大人になることです。

       

      勉強して身につけたこれらの能力は、自らの可能性を広げ、未知への挑戦を可能にします。視野の広さと知的好奇心は、得意とする分野や興味の持てる道に出会える可能性を引き上げるでしょう。そして、職業はもちろん、社会活動から趣味に至るまで能力を発揮できるフィールドが広がります。人は社会に生きる生き物ですから、自らの生業や活動が人から必要とされたり、世の中の創造を担ったりする経験により幸福感を得られます。勉強して積み上げた能力は、どのように使われるべきなのか、昨年の東京大学学部入学式の式辞において上野千鶴子さんはこのように述べています。

      「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。(原文のまま、一部抜粋)」

       

      知性を持たない人は、限られたコミュニティに固執して自分を中心にした尺度で物事を解釈したり、客観的根拠を考えずうわべの情報に流されて行動したりしてしまいがちです。そうした社会には、排除や偏見を助長する空気や変化を受け入れない風土が渦巻き、新しい価値の創造は起こりません。

       

      何のために受験するのか、目指したいものや好きなものを学べる環境または個性を伸ばせる環境を手に入れるためでもいいし、受験勉強自体に面白さを見つけられるのならば、それでもいい。答えは、あなたが考えて納得してください。

       

      1年後の入試まで残り365日を切りました。一日平均3時間の自習時間(塾の授業時間はカウントしませんよ)をとるとすれば、1,095時間となります。2年後の入試ならば、2,190時間となります。この時間を"まだ余裕がある”と思うか、"もうこれだけしか残されていない”と思うかは、あなた次第です。新受験生のみなさん、心に決めた受験動機をもって勉強に励んでください。(励み方・計画の立て方が分からない時は、理科塾も力になりますよ。)

       

       

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