情報の受け手に立つ心構え

  • 2018.07.23 Monday
  • 14:27

「平尾受刑者にそれほど恐怖を感じていなかった。」

 

平尾受刑者とは、今年、愛媛県今治市の刑務所から脱獄を図り、長らく広島県の向島に身を隠した後、広島市内で身柄を確保された脱獄犯です。尾道市の対岸にある造船とミカンで生業を立てている小さな島で起こった大騒動は、連日メディアに取り上げられ、記憶に新しいところです。

 

脱獄犯の足取りを辿りながら報道でなされなかった平尾受刑者の心理を再検証しようという企画がBSの番組で放映されていました。この番組は、地上波では絶対できないことをやる!というコンセプトのもと、破廉恥ものなど軽い切り口で鋭く突っ込むというスタイルです。

 

冒頭の言葉は、向島でインタビューを受けた住民たちが口にしたもの。平尾受刑者は窃盗の罪で服役、比較的模範囚の部類だったそうです。刑務所内の人間関係に嫌気がさしたとか、病気の家族に会いたくなったなどの理由から脱獄を図ったのではないかと推測されていました。とはいっても、脱獄中に切羽詰まってどんな凶行を起こすか分かりません。しかし、温暖で静かな島の環境で育った住民たちは、大手メディアで報道されるような恐怖におののく住民のイメージとは少々違っていたというのです。他にも平尾受刑者が立ち寄ったと当時噂されたドラッグストアや神社などに取材すると、立ち寄ったこと自体が事実ではなかったことが判明。確保された広島市内の路上の前にある民家には、複数の大手メディアが民家に設置されていた防犯カメラの映像を求めて、夜遅くまで不躾に訪れていたなど。噂や報道の実態が次々と明るみにされていきました。

 

私の親の里が尾道ということもあり、向島には親戚筋も住んでいます。幼いころから尾道や向島に訪れたことが幾度となくあり、土地柄や人となりを多少なりとも知っています。このBSの番組は、まあ普段はお下品で下世話でふざけた番組です。今回の取材を話半分に聞いたとしても、向島の住民たちが脱獄犯に緊張感がありながらも、おっとりと冷静に構えていたことは腑に落ちました。もっとも、普段は鍵をかける意識が低い島において、この事件をきっかけに島のホームセンターでは鍵がバカ売れしたそうですが…。

 

情報には、必ず発信者の立場や意図に絡んだフィルターやバイアスがかかります。情報の受け手に立つとき、いかにフィルターやバイアスを取り除いていけるか。人間には、自分の物差しで情報をはかり考える自由と権利があります。自由と権利を放棄して、人に判断を委ねていませんか。楽ちんで薄っぺらな楽しいものに頭が流されて行かないように五感を鍛え、知識を蓄え、考える癖をつけたいものです。

 

あ、理科塾の発信情報だってフィルターがかかっているかもしれませんよ。

分かりやすさの落とし穴

  • 2019.01.29 Tuesday
  • 17:51

♪宵闇に 爪弾き 悲しみに雨曝し 花曇り♪

♪枯れた街 にべもなし♪

♪侘しげに鼻垂らしへらへらり♪

………(中略)………

♪あなたは(ふらふらふら)フラミンゴ♪

♪鮮やかな(ふらふらふら)フラミンゴ♪

 

失礼しました。何のことか分かる方も多いかと思います。米津玄師が歌う「フラミンゴ」の一節です。ニコニコ動画から徐々に頭角を現した若き才能は、ミュージックビデオの再生回数においても次々とヒットを飛ばしています。米津玄師の曲の魅力は、複雑に音声を重ね合わせた不協和音ともとれる曲調と、歌詞に埋め込まれた難解な言葉にあります。はじめて耳にすると難しい印象を受けるのですが、何度か聞いている内に頭の中で奏でられる心地よさというか、中毒性とも言える感覚に捉われます。もっと聞きたい、もっと知りたいと米津玄師ワールドに引き込まれていきます。

 

カラオケで米津玄師の曲を歌っている人たちの内どのくらいの人が歌詞の意味を理解しているのか分かりませんが、複雑で難解だからこそ、その深みの虜になるのだろうと思います。米津玄師の歌は噛めば味がでるスルメ曲とも言われているそうです。

 

 

■情報は軽くなる!?

 

現代社会の日常には分かりやすいもの、とっつき易いものが溢れています。テレビのニュース番組や情報番組・SNSに出回る情報の数々。アイキャッチの効くコピーや文言や画像を並べていかに人々の興味を引くか、制作する人の工夫とテクニックが試されます。

 

見ている人を分かりやすく引き込むには、白か黒か・AかBか・好きか嫌いかというような対立軸を設けることが有効です。例えば、情報番組では、タレントのスキャンダルや社会の出来事に対してセーフなのかアウトなのかを雄弁なコメンテーターたちが言い合います。視聴者は、テレビ局が巧みに敷いた構成に乗っかりながら茶の間から討論に加わる外野となるでしょう。新橋や銀座あたりで一般の人をインタビューした映像は、このプロズ&コンズ(是か非か)の議論に茶の間を一層巻き込んでいきます。最近は、視聴者のツイッターを画面テロップに流す手法も見られるようになりました。

 

私たちは無意識の内にこれらの情報に誘導されているかもしれません。そうなった時、私たちは限られた情報の中で分かったような気になりがちです。分かりやすい情報の氾濫は、情報に対する“慣れと愚鈍“を引き起こします。いつしか画面に流れる情報をスクロールする指の速さばかりが増していくでしょう。

 

 

■情報の「すきま」を読む大切さ

 

一つの出来事には様々な要因や背景が絡み合っているものです。誰にでも分かりやすくするために情報を単純化することは、事実を削ぎ落とすことでもあります。白と黒の間にはグレーがあるし、AとBの間にはA+やB−があるかもしれない、好きと嫌いの間には好きでも嫌いでもないが存在するかもしれません。単純化された情報の裏や間に目を向け、疑問を抱いて情報と向き合うには、知らないことを知り、分からないことを調べ、考える癖をつけておくことが大切です。難しいことを避けることも、思考停止することもやめませんか。一見とっつきの悪い難しいことにも、それを紐解くと面白いことや楽しいことが隠されているかもしれません。やわらかいケーキや口の中でとろける霜降り肉は美味しいけれど、堅い煎餅や煮干しもまた美味しく栄養となるように。

情報のカプセル化に抗いたい

  • 2019.03.19 Tuesday
  • 13:45

“家電運”というものがあるのならば、私は良運の持ち主ではないようです。特に酷いのが掃除機(クリーナー)運です。この10年間に4台の掃除機たちを看取ってきました。中には入院手術を試みたものもあります。付き合ってきた掃除機たちの形式も、オーソドックスな紙パック式×2⇒ハイパワーなセミサイクロン式⇒超軽量のサイクロン式と多種多様です。決して手荒な扱いをしているつもりはありません。ダストはこまめに除去しますし、フィルターとブラシのメンテナンスも欠かさずに行い、大切にしてきたつもりです。現在お付き合いしている5台目くんは、超軽量多機能紙パック式です。先日、この5代目くんの“ウリ”の一つであるヘッドノズルLEDライトが点灯しなくなりました。掃除機としての使用に問題はないのですが、販売店の保証期間内でもあったので販売店に修理を依頼しました。

 

1週間後、無事に修理が終了したとの連絡が入り、販売店に引き取りに行きました。問題のあったLEDライドはヘッドノズル丸ごと新品に交換されていました。販売店の店員から「修理の詳細はこちらの明細に記載されております。」と袋に入った修理明細書を掃除機と共に手渡されて終了です。自宅に戻ってから修理明細書を見て驚きました。不良個所はLEDライトだけではなかったのです。掃除機の心臓ともいえるモーター周りにも不具合が見つかり、モーター関連の部品がいくつか交換されていました。

 

修理明細書には以下のように記述がありました。

『この度は…(中略)…ヘッドランプが点かない為、床用ノズルを交換させて頂きました。モーター電流特性不具合の為、モーターサポートゴムマエ、モーターサポーターAU、モーターファンUを交換させていただきました。動作テスト良好です。』

えっ、これだけ?

 

職業柄なのか、私の疑問と関心は、幾月も使用していない掃除機のLEDライトが壊れた原因にありました。「LEDライトはなぜ点灯しなくなったのか?」「モーター電流特性不具合とは何なのか?」過電流でも発生してLEDライトがボムしたのでしょうか?そもそも使用開始から日が経っていない掃除機なのにどうして不具合が起きてしまったのか?不具合の考えられる原因と詳細説明が修理明細書に記載されているものと期待しておりました。原因が誤った使用方法にあるならば、反省して掃除機の扱い方を改めます。突発的な過電流が原因であるならば、我が家の配電に問題があるのかもしれません。(我が家の築年は古いから気になる。)『ヘッドランプが点かない為、ノズル交換』って、そのまんまじゃないか。担当者はノズルを分解して原因を究明したのでしょうか。製品開発に役立てる実証データとして検証したと信じていますが、できればその結果を知らせていただきたかった。

 

世間の大半は、無料でノズルが新品になったのだから、修理明細書に原因と詳細が記載されていなくても納得するのかもしれません。きっと私は面倒臭いことを言う消費者なのでしょう。(今回の件でクレームなんてつけていませんよ。心の声です。)

 

現在の世の中では、物事に対する「なぜ?」が意外と蔑ろにされているのではないでしょうか。物事を表層的に捉えて納得させられる、または、分かった気になる場面は多く見られます。企業が消費者に事細かく説明をしたところで、“理屈っぽい”とか、“話が長い”とか、消費者は面倒臭がって見向きもしないかもしれません。あるいは、企業側の都合で説明があえて控えられているのかもしれません。企業秘密的な都合は兎にも角にも、消費者は「なぜだろう?」を普段から気にする癖を身につけたいものです。人の脳の活動は楽な方へ傾きがちです。考えることをさぼり続けると鋭い気づきを失ってしまいます。そして自分の気づかぬ内に、操作された情報に流されているものです。

 

なーんも考えないとこんなことに…!?